PANTAがGoodstock Tokyoに最初に出演したのは開店間もない2016年4月のこと、恐らく弾き語りでのワンマン・ライヴはこのときが初めてだったのではないかと記憶している。その後はGoodstock Tokyoで断続的に『PANTA アコースティック ソロライブ』が行われ、2年も経たないうちにソロで北海道や関西、九州ツアーが組まれるまでになったのだ。
この日は今年の活動のエッセンスを散りばめたようなセットリスト。オープニングに歌うことが多かったという、ルースターズに詞を提供した「鉄橋の下で」から始まり、発売30周年を迎えたアルバム『クリスタルナハト』の曲に繋いでいく。このところ「エーデルワイス」の一節を加えて歌われるようになった「メール・ド・グラス」や、「Again & Again」と「ダマスカス」を前後に配した「ナハト ムジーク」3部作も披露され、昨今のきな臭い情勢を反映した空気のまま1部の最後は「七月のムスターファ」。
2部は先頃亡くなった赤軍派議長・塩見孝也への餞のように「世界革命戦争宣言」「赤軍兵士の詩」から始まった。続けて「人間もどき」に雪崩れ込んだのは、1990年11月12日『即位の礼』の日に頭脳警察(PANTA+TOSHIの二人編成)が出演した同志社大学『超非国民集会』のセットリストに倣ったものらしい。
会場がすっかり真っ赤に染まった後はカヴァー大会。ボブ・ディラン作の「マイティ・クイン」や、PANTAが出演した映画『いぬむこいり』の片嶋一貴監督が日本語詞を書いた「アイ・シャル・ビー・リリースト」が掠れ気味なのに艶やかな声で歌われるとヴォーカリストとしての魅力が全開になる。スウィート路線からの「メキシコ式離婚」「Will You Still Love Me Tomorrow」に加えて田端義夫や佐渡山豊も歌った沖縄の流行歌「十九の春」まで飛び出した。
本編の最後は「来年が少しでも良い年になるように」と前置きされた「万物流転」。アンコールでは遊びに来ていた菊池琢己が呼び込まれ、先日のUNTI X’masアフターパーティーでも披露されたローリング・ストーンズの「As Tears Go By」からスタート。中谷宏道を初めとする旅立ってしまった仲間たちに捧げるように歌われた「奴と俺とおまえと」、やはり先日この世を去った妹尾隆一郎がレコーディングに参加した「ロックもどき」などが次々に披露される。
そして最後はやはり「さようなら世界夫人よ」。今年の3月に『ビクター・ビンテージ・ロック 〜日本のロック名作選〜』の一環として『頭脳警察セカンド』が再発されたことに端を発して「さようなら世界夫人よ」がJASRACに登録された頃から、PANTAがこの曲を新たに捉え直したように歌の説得力が増しているような気がする。それはこの歌詞がますます現実味を帯びている世情も相まってのことなのだろうが、頭脳警察50周年に向けて天皇の生前退位もあり同時多発的に事件が起こりそうな予感も漂ってしまうのだった。
2017年12月28日 大岡山 Goodstock Tokyo
PANTA アコースティック ソロライブ
出演 : PANTA(vo,g)
ゲスト : 菊池琢己(g,cho)
<1部>
1. 鉄橋の下で
2. メール・ド・グラス~エーデルワイス(Edelweiss)
3. 夜と霧の中で
4. Again & Again
5. ナハト ムジーク
6. ダマスカス
7. 七月のムスターファ
<2部>
8. 世界革命戦争宣言
9. 赤軍兵士の詩
10. 人間もどき
11. マイティ・クイン(The Mighty Quinn)
12. I Shall Be Released
13. メキシコ式離婚(Mexican Divorce)
14. Will You Still Love Me Tomorrow
15. 十九の春
16. 万物流転
<Encore : with 菊池琢己>
17. As Tears Go By
18. 奴と俺とおまえと
19. ステファンの六つ子
20. ロックもどき
21. さようなら世界夫人よ