三文役者の花之木哲とPANTAとの出会いは1974年頃に遡る。頭脳警察が音楽を担当した三原元主宰の芝居『ロック・サド・イン・ジャパン』の主演俳優として出会い、その後ロック・ミュージカル上演事務所“UN HAPPYな私達“を立ち上げ、『エクスキューズ・ユー』(1975年)『コルト76』(1976年)のためにPANTAと楽曲を共作することになる。これらの楽曲の中からPANTAのソロ・アルバムに「EXCUSE YOU」「三文役者」「走れ熱いなら」「ガラスの都会」「あやつり人形」「追憶のスーパースター」が収録され、花之木自身も1977年に頭脳警察のベーシスト、石井正夫らとバンド“三文役者“を結成する。長い活動休止期間を経て2014年に頭脳警察との対バンというかたちで三文役者を復活させたことも記憶に新しいところだ。現在は結成時の石井正夫をはじめとする歴代メンバーに新たに青木丈征を加えたラインナップとなっている。
このようにPANTA/頭脳警察との関わりが深い花之木哲/三文役者だが、両者の本格的な共演は意外にも今回が初めてということらしい。第一部はクリス・インペリテリの「Somewhere Over the Rainbow」が流れる中、三文役者が登場。ハネるドラムに腰が据わったベース、ストラトとレスポールのツインギター、ハイトーンとタメが効いたヴォーカル。70年代ハードロックを体現したようなステージが繰り広げられた。復活後もリハーサルとライヴを繰り返し、バンドが充実期に入っていることが感じられる。5人体制になってからレコーディングされたアルバム『魂』に収録された「悪魔の誘い」「Hold On My Way」「怒雨降り」などでさえ、更に一段高みに上ったような印象だ。揺らぎも含めた音の塊が客席に投げつけられたり、その中からレスポールのトーンが浮かび上がってきたりと、惹きつけられる場面が次々と訪れていったのだ。終演後花之木が「もっと削ぎ落としたいんだけどね」と言っていたように、三文役者はこの場所に留まらずまだまだ転がり続けてくれるようだ。
第二部はPANTAソロからスタート。先日急逝した大杉漣に捧げるように歌われた、映画『天使に見捨てられた夜』の挿入歌「雨の化石」がいきなり涙腺を刺激してくれる。演劇出身の花之木哲が如何にもロッカーな佇まいで言葉を吐き出していたのに対して、ロック屋のPANTAが台詞を語るように歌の世界を表現していたのは面白い対比だ。花之木との共作「EXCUSE YOU」が早くも披露され、「Good Morning Blues」で弾き語りを終えると、三文役者のメンバーが呼び込まれる。
PANTAと花之木哲による長めのMCを挟んでセッションが始まった。「ガラスの都会」や「あやつり人形」がとてもヘヴィに変貌している。それともこちらのアレンジがオリジナルに近いのだろうか?「あやつり人形」で花之木が歌う箇所は『走れ熱いなら』とは別ヴァージョン。「コルト’67」のエンディングでPANTAがテレキャスターを抱え、「悪たれ小僧」へ雪崩れ込む。あっという間にエンディングを迎え、どこか「屋根の上の猫」を髣髴とさせるイントロに導かれたのは「回転木馬」。PANTAのヴォーカルで聴くとまた新鮮だ。メンバーはステージを降りず、そのままアンコールに突入すると始まったのはやはりこの曲しかないだろう、「三文役者」。
花之木哲とPANTAの長きに渡る関係性と、未だ現役で在り続ける力強さに満たされた3時間はこれで大団円。果たして次の展開はあるのだろうか…?
2018年3月2日 原宿クロコダイル
~ 出逢いのときめきは今もここにある ~
三文役者 vs PANTA
・三文役者 : 花之木哲(vo) / 石井正夫(b) / ちぇり~(g) / さとっちょ(dr) / 青木丈征(g)
・PANTA(vo,g)
第一部
<三文役者>
第二部
<PANTA>
・雨の化石
・まるでランボー
・Love Minus Zero / No Limit
・EXCUSE YOU
・落ち葉のささやき
・裸にされた街
・Good Morning Blues
<PANTA+三文役者>
・You Send Me ~ 追憶のスーパースター
・ガラスの都会
・あやつり人形
・コルト’67
・悪たれ小僧
・回転木馬
アンコール
<PANTA+三文役者>
・三文役者