PANTA68歳の誕生日を祝い、頭脳警察結成50周年イヴも兼ねたパーティが開かれた。告知が開催直前にずれ込んだにも関わらず、会場となった渋谷ラ・ママにはファンクラブ会員を始め、音楽関係や映画・演劇、出版業界に学界、ジャーナリストからアイドル界隈に至るまで、多方面に亘るPANTAの仲間が大勢詰めかけたのである。
パーティの冒頭、乾杯の音頭に立ったのは元・オックスのギタリスト、岡田士郎。頭脳警察結成以前のPANTAが一時期所属したホリプロの先輩である。「ハッピー・バースデイ!」の声に合わせて来場者に配られていたクラッカーが一斉に鳴らされ、宴が始まった。
しばしの歓談の最中、PANTAと交流があるアイドルグループ、アップアップガールズ(仮)から賑やかなビデオメッセージが届けられる。この後、映画『いぬむこいり』でPANTAと共演した有森也実が登壇し、歌だけでなく「ナレーションとか役者とか、もっともっとPANTAさんの声が聞きたい!」という熱い言葉を添えて花が贈られた。続けてアップアップガールズ(仮)の元メンバー、仙石みなみも花束を抱えてステージに上る。
花束贈呈コーナーが終わると、ゲストとPANTAによるトークコーナーに突入する。最初に客席から呼び込まれたのは、社会学者で首都大学東京教授の宮台真司。PANTAが「先生、最近口が悪過ぎるよ」と口火を切ると、直ぐにとめどなく溢れ出すパンクな発言で応える。「騒がないと世の中変わらないんだよ」と自分の立ち位置と世の中への苛立ちを表明しながら話は尽きず、時間になると自らステージを降りる。次のゲストは映画『カムイ外伝』にPANTAを起用した崔洋一監督。内田裕也のエピソードからPANTAとの出会い、この日来場していた映画監督の瀬々敬久、片嶋一貴両名との交流まで、こちらも話は尽きない。最後のゲスト、ジャーナリストでマセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表の越湖信一が、イタリアのモデナにあるエンツォ・フェラーリ・ミュージアムでライヴをやって欲しいとPANTAにエールを送り、トークコーナーが終了。
パーティも佳境を迎え、ゲストライヴに突入する。まずPANTAとはグラムロック・イースターやUNTI X’masで長年共演している、マルコシアス・バンプ~AKIMA&NEOS~Rama Amoebaのアキマツネオがアイドルグループ、チャオ ベッラ チンクエッティ(元・THE ポッシボー)の橋本愛奈と登場、T.Rexのトリビュート・アルバムでデュエットした「Life’s A Gas」をライヴ初披露した。吉開りりぃはGONZOが奏でるキーボードにのせてオリジナル曲「鈍光」を情感たっぷりに歌い上げる。
ここでパーティを企画したラ・ママのプロデューサー、石塚明彦が登場。昨年、一昨年と頭脳警察合同生誕祭が開催されるも先頃閉店となった新宿JAM最後の店長であり、かつてPANTAがプロデュースしたバンド、太陽の塔のドラマーである。石塚が太陽の塔時代の盟友、井垣宏章を紹介すると彼らのデビュー曲「明日の歌」を相変わらずのしつこいパフォーマンスで客席を巻き込み強引に盛り上げていく。
このコーナー最後に登場したのは、PANTAとは2月1日に初めて会ったばかりだという冨田麗香。井垣とは逆に最初のワンフレーズで客席をがっちりと掴み、中島みゆきの「時代」を見事に歌い上げたのだった。
セットチェンジの間に鈴木慶一と佐野史郎、PANTAがステージに上り再びトークの時間となる。この3人に遠藤賢司を交えたメンバーでカラオケへ行った話が披露された後、プレゼント争奪じゃんけん大会となる。目玉はPANTA家の倉庫から出てきたという、埃を被った年代物のガットギターとヤマハのフォークギター、赤ラベル!
いよいよPANTAのミニライヴが始まり、1曲目は先頃亡くなったフランス・ギャルの「Bonsoir John-John」。2曲目のボブ・ディラン/ザ・バンド「アイ・シャル・ビー・リリースト」は映画『いぬむこいり』公開記念イヴェント「勝手にPANTA」で披露された、片嶋一貴監督による日本語詞のヴァージョン。映画で共演した勝手にしやがれの武藤昭平と交互に歌い、鈴木慶一がコーラスをつけるというまさにこの夜ならではの組み合わせが実現した。
PANTAが最後に歌った「さようなら世界夫人よ」、これまで「地面に這いつくばっても生き抜く」というヘルマン・ヘッセの意志を感じながら歌っている、と何度も語っていたが、最近になって旅立ってしまった仲間たちへの餞の意味が加わってきたように思えてならない。残された人間が「君たちの分まで生きる」などと安っぽい台詞を並べたてるようなものとは一線を画す、「君たちのことを思いながら、自分に与えられた時間を精一杯生きる」と宣言したような、68歳のPANTAにしか歌えない表現に達しているように感じられたのである。
パーティは再び登壇した崔洋一監督の挨拶で大団円。監督の言葉を借りれば「季節のよろめきに身をまか」せない人々の集いは盛会のうちに終了した。退場時にはPANTAが来場者ひとりひとりに記念の品を手渡しするというおまけつき、頭脳警察結成50周年に向けて弾みがついた夜だった。
2018年2月5日 渋谷 La.mama
50周年イヴParty ~PANTA 68-year-old Birthday Party
<乾杯>
挨拶:岡田士郎(ex.オックス)
<花束贈呈>
挨拶:有森也実、仙石みなみ(ex.アップアップガールズ(仮))
<トーク>
宮台真司(社会学者、首都大学東京教授)×PANTA
崔洋一(映画監督)×PANTA
越湖信一(ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表)×PANTA
<ゲストライヴ>
アキマツネオ(Rama Amoeba)×橋本愛奈(Ciao Bella Cinquetti) – Life’s A Gas(T.Rex)
吉開りりぃ×GONZO – 鈍光(吉開りりぃ)
井垣宏章(ex.太陽の塔) – 明日の歌(太陽の塔)
冨田麗香 – 時代(中島みゆき)
<トーク>
鈴木慶一×佐野史郎×PANTA
<プレゼントコーナー>
<PANTAミニライヴ>
– Bonsoir John-John(France Gall)
– I Shall Be Released(Bob Dylan/The Band/日本語詞:片嶋一貴) with 武藤昭平, 鈴木慶一
– さようなら世界夫人よ(Hermann Karl Hesse/頭脳警察)
<エンディング>
挨拶:崔洋一