90年代頭脳警察は、1989年11月29日に初リハーサルを行い、アルバム『7』のレコーディングを開始した(翌年8月30日に終了)。そして1990年6月15日、日清パワーステーションで復活ライヴを行う。
6月15日は、樺美智子氏が未来を奪われた日。彼女の命日に合わせたのか偶然なのか、それはわからない。福島泰樹氏の短歌の一節「六月の雨は切なく翠なす樺美智子の名はしらねども」のごとく、普段よりも遅く20時20分に開場するパワステは、雨に濡れはじめた。
5月13日に発売されたチケットは2時間でソールドアウト。会場BGMで流れるレニー・クラヴィッツが、入場SEのMothers Of Invention「Who Are The Brain Police?」に変わると、1,100人の観客が殺気立った。頭脳警察の入場SEといえば、近年までこの曲だったが、意外にもこれはパワステのスタッフによるアイディアで、この日はじめて使われた。
セットリストは次の16曲(6、7、8、9はPANTA&TOSHIのアコースティック編成)。
1. 銃をとれ!
2. マラブンタバレー
3. ふざけるんじゃねえよ
4. 夜明けまで離さない
5. 落葉のささやき
6. 暗闇の人生
7. ホ短調の間奏曲
8. スホーイの後に
9. 少年は南へ
10. 万物流転
11. アラブレッド
12. コミック雑誌なんかいらない
13. 扇動
14. 悪たれ小僧
15. 戦慄のプレリュード
16. Blood Blood Blood
「Who Are The Brain Police?」をぶった切るような下山アキラのベースで幕を開けた90年代頭脳警察の復活ライヴ。現在進行形のサウンドをつくるのは、下山のほかに藤井一彦(G)と後藤升宏(Dr)の若手ミュージシャン。彼らの感性に、TOSHIのパーカッションとPANTAのヴォーカルとギターが音圧でプレッシャーをかける。
この固定メンバーで、1991年2月27日の渋谷公会堂「最終指令自爆せよ!」まで疾走した。のだが、復活ライヴが終わった楽屋は、最悪の状態だったという。どのぐらい最悪だったかといえば、「今日で90年代頭脳警察は終わった」とスタッフのだれもが思ったほどだ。
「Blood Blood Blood」でテンションのあがったTOSHIが、コンガとシンバルを客席に投げ、カメラマンと警備員にケガをさせてしまう。「客席に楽器を投げるなと言っただろ! 謝って来い!」とPANTAがTOSHIを怒鳴った。
数年後、回想するPANTAは「あんなにケンカをしたのはめずらしいね。ビデオに撮っておけば、いい記念になったのに」と笑った。
(フリーライター:須田諭一)