2018年1月13日、Mt.RAINIER HALL SHIBUYAで頭脳警察とはちみつぱいの対バンが行われる。はちみつぱいはオリジナルメンバーを中心に、頭脳警察は京都の騒音寺と合体してのロック・パーティーとなった。
途中、鈴木慶一が1988年に行われたはちみつぱいの再結成・解散コンサートを振り返る。「あのとき、PANTAに連絡をして『頭脳警察で出てくれないかな?』って誘ったんだよ。70年代、反対に位置していた頭脳警察も出ればおもしろくなるかなと思って。ところが頭脳警察は活動していなかったから、『いまは無理かな』と断られた。あれから30年、やっと実現しました」
鈴木慶一が誘った88年は、図らずもPANTAが頭脳警察の復活を意識した年だった。
87年にリリースしたアルバム『クリスタルナハト』に自己触発されたかのように、頭脳警察の楽曲に引き寄せられるPANTA。88年の夏、PANTAは「大切な話がある。どこかで会おう」とTOSHIに電話を入れる。
TOSHIが指定したのは清瀬市のロッテリア。PANTAは「頭脳警察を復活させたい」と伝える。「いますぐに」と。当然のようにTOSHIは受け入れたという。予感というか、またいずれいっしょにやることになるだろうと漠然と思っていたのだ。「スケジュールの調整と心の準備がある。一年間待ってくれ」と返事をした。
この待機期間を使って、PANTAはアルバム『P.I.S.S.』をつくるわけだが、ここには「うなだれてたオレの野生が鎌首をあげて/物分かりの悪さなら 天下一品だぜ/また荒っぽい本能の季節がやってくる(フェロモンの誘惑)」など、苛立った感情が記録されている。
当時、私は昭和天皇の重体にともなう自粛の苛立ちかと単純に思っていたが、このように頭脳警察の文脈から『P.I.S.S.』を改めて聴いてみると、自分のタイミングで復活できなかった深層心理のようなものが感じられて興味深い。
そして、89年秋。新宿の居酒屋で再び二人だけで会う。
「なにをやりたいとか、そういうことは関係なかった。TOSHIという人格が必要だった」というPANTA。「俺はPANTAの考えていることはだいたいわかる。それだけ。なにを話したのか全然憶えていないけど」というTOSHI。
90年に復活して以来、頭脳警察の根幹はなにも変わらない。
(フリーライター:須田諭一)