中学時代のある日、クラスにロータリークラブ(結婚斡旋のシステムではない)の加入の話が舞い込んで来た。会員になると外タレ等のコンサートのチケットが優先的に割り引きで手に入るという代物で、そういったものには必ずと言っていいほど、まず疑ってかかるオレではあったが、友人との付き合いもあり加入することになった。
その第1弾として、新宿厚生年金会館でやるザ・サファリーズというグループのコンサートに行くことになった。
当時、サーフィンミュージックからホットロッドという車の排気音などを混ぜた音楽が流行りはじめ出した頃で、仲間と一緒に勇んで出かけたものだ。
ザ・サファリーズと言えば、ワイプアウトなどというヒット曲で、オレも知っていたのだが、ワイワイガヤガヤとオープニングを待つ客席で友人達と喋っていたところ、幕が開きエレキサウンドの響きとともにオレも友人達もワクワクした思いでステージに目をやった。が・・・・あれっ、何だ!? 7、8人ステージにいるグループは日本人?
ってことは、このロータリークラブってのは、思ったとおりの詐欺まがい商法で、まんまと引っかかってしまったのかと思いきや、そのグループの二人いるヴォーカルのうちのひとりが、さあみなさんご一緒に、こう手を叩いてください・・チャンチャンチャンッ・・と客席をリードしている。
何だよぉ、温泉の宴会じゃあるまいし、勘弁してくれよ、と思っていたら、それに呼応した客席の手拍子に合わせて、演奏が始まり彼が歌い始めた。♪ダークな背広にブーツを履いてぇ、チャンチャンチャン、チャンチャンチャン、フリフリフリフリフリフリフリフリッ・・・・♪ 何だ、なかなかカッコいいじゃないか、気がつくとオレはそれに合わせて足でリズムを取りだしていたのだった。
そう、そのグループは、いま田辺エージェンシーの社長であられるドラムスの田辺昭知
率いるザ・スパイダースであったのだ。
ヴォーカルのひとりは井上順、客席を手拍子でリードしていたのはマチャアキこと往年の大俳優である堺俊二の息子である堺正章であったのだ。
そうオレが見た最初の日本のアーティストは、このザ・スパイダースであったのだ。
そして、しばしの休憩タイムの後、そのサファリーズの演奏が始まった。
ジャジャジャジャジャッ♪こんなの字で書いたって何の曲かわかりゃしないだろうけど、とにかく音符で書くわけじゃないんだからこう書くしかないよな・・・・
ということで、先程のジャジャジャジャジャというのは“You’ve really got me”のイ
ントロのつもりでした。
いきなりこんな曲のイントロで始まり、ギョッ、サファリーズってこんなカッコ良かったのかっ、知らなかった、不覚であった!
あまりのカッコ良さにポーッとしてる間に曲は進み、大ヒットした彼らの“ワイプアウト”のドラムのフロアタムのイントロが始まった。ドコドコドコドコドコドドッコドコ・・・・これまたこんなカタカナ表記で書いててバカらしくなってくるけど、致し方ないことは仕方ない・・・・
さてちょっとした興奮状態でコンサートは終了し、帰路についたのだが、さっきのあまりにカッコ良かったサファリーズの曲が忘れられなくて、その後、数日は、それが頭から離れることがなかった。
しかしそれから数ヶ月経ち、その“You’ve really got me”という曲は実はイギリスのキンクスというグループの曲であってサファリーズの連中はそれをカヴァーしてたにすぎないということがわかり、ガッカリしたと同時にキンクスという存在と知り合えたことに異常な喜びを得ることとなった。
我ながら微笑ましい青春の1ページである。